「感動」
大晦日でした。
母のために建てた小さな家が、九州の海辺にあった頃の話です。
何年かぶりで、そこでお正月を過ごそうと思い、九州へ帰りました。
夜、久しぶりに逢った仲間と食事をして、
「いい正月をお迎えください」とあいさつして、
みんな帰って行った後、僕はシャワーを浴びて、寝ることにしたんです。
僕のベットルームは、
ヨットの船室を模して作って貰っているんです。
屋根はガラス張りのスライド式で、
寝転がると空が見えるようになっている。
要は、米軍の組み立て式のベットに寝袋だけみたいな、
簡素なベットルームなんですが、その晩飛び込んだら、
スライド式屋根のゴムがいかれていて雨漏りしていたらしく、
布団がびしょびしょに濡れていたんですね。
あーあ、大晦日についてねえな、と思ったんですが、
気を取り直して、もう一度シャワーを浴び直しました。
夜中だからベットは乾かせないし、
本当に寝袋を出して寝る羽目になってしまいました。
僕は暖炉の前で寝袋で寝るのが好きなんですけれども、
それに入って暖炉の火を見ながらなんとなくテレビを付けたら、
たまたま東映映画をやっていました。
大好きな山下耕作監督の
「夜汽車」という映画でした。
これが、実に素晴らしい映画でした。
東映を離れてから、
この会社の映画をあまり観ていなかったんですけれども、
後輩の小林念侍君が、とってもいい仕事をしてました。
たった一人、海辺の家で大晦日の晩に、
暖炉の前で寝袋で寝転がって、
退屈しのぎに眠くなるまで、と思って観ていたのが、
物語の展開も、出ていらっしゃる俳優さんたちも素晴らしくて、
気がついたら自分はいつの間にか正座して、
映画が終わった時には拍手してました。
住んでる方が何人かしかいないというような、
冬の別荘地の、それも土砂降りの雨の中の、
大晦日の明け方の出来事でした。
拍手している時は、我を忘れていると思うんですね。
我を忘れているということ、そんなに心が高揚できるということは、
素晴らしいことだなとその時に思いました。
人間にとっていちばん寂しいのは、
何を見ても、何を食べても、何の感動もしないこと。感動をしなくなったら、人間おしまいだと思うんですね。
こんなに寂しいことはないと思います。
人間にとっていちばん贅沢なのは、心がふるえるような感動。お金をいくら持っていても、
感動は、できない人にはできません。
感動のもとは何でもいいんじゃないでしょうか。
美しいとか、旨いと感じるとか、
一日に一回でいいから、我を忘れて、立ち上がって、
拍手ができるようなことがあればいいですね。
今の世の中で、こんな幸せなことはないんだと思います。
一日に一回では、多すぎるかもしれません。
一週間に一回でもいいですから。
心が感じて動けることに出会いたい。とても贅沢だと思いますが、
感じることをこれからも探し続けたいとおもってます。
格闘技の試合でも
本当にいい試合には勝ち負け関係なく
両者に盛大な最高の拍手がおくられます
勝敗は格闘技においてとても重要ですが
観客が我を忘れて見入る、心たかぶる
そして感動する試合を
プロ選手には見せてもらいたいです
自分自身もリングでは
そのような闘いをしたいです